題名の敗者のゲームとは、投資のことです。著者は、プロの機関投資家が、全投資家に占める割合が9割以上と、この何十年かで非常に増大したことを根拠に、投資の成績で市場平均を超えることがほぼ不可能になったことを述べ、これにより投資は敗者のゲームになったとしています。
プロがほとんどを占めるようになったため、皆より先んじて情報を得て、出し抜くことが非常に難しくなったのです。
プロである機関投資家ですら、長期では9割以上が市場平均以下の投資成績であるため、プロではない個人投資家が市場平均に勝つのはほぼ不可能だと筆者は述べています。
ではどうすればいいのか。その答えとして筆者は次の投資の4原則を挙げています。
投資の4原則
1.将来、いつ何に、どの程度の資金が必要になるか、目標を立てる
2.その目標を達成するために必要な株式と債券の配分比率を決める
3.株と債券を幅広く分散する
4.投資の基本方針を、ブレずに辛抱強く実行する
以上の4つの原則を守って投資をすれば、敗者のゲームである投資に勝利することができるというのが本書の主張です。
この4原則を実行していく上で筆者はインデックス・ファンドに計画的に長期投資することを勧めています。
インデックス・ファンドはS&P500など市場の指数に連動したファンドで市場平均の成績を実現するファンドです。
市場平均の成績というと、もの足りないと思う方も多いかもしれませんが、先ほど述べたように、プロの機関投資家でも、長期的に市場平均を超えた成績を出すことができたのは、全体のわずか1割です。しかも、その1割を前もって知ることは非常に難しく、ほとんど不可能なレベルです。ずっと勝ち続けている投資家というと、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏くらいしか該当者がおらず、本当に一握りです。ゆえにインデックス・ファンドの市場平均の成績というのはかなりの好成績です。
更にかかるコストが安いことも魅力的になっています。市場平均に勝とうとするアクティブ・ファンドでは、プロの機関投資家に払う信託報酬や手数料で数%は持っていかれます。それに引き換え、インデックス・ファンドのそれは、0.1%以下となっているのです。
インデックス・ファンドに投資するだけでかなりの分散投資になり、リスクヘッジとなることも魅力の一つです。インデックス・ファンドは市場の指数に連動するファンドのため、その市場の指数に組み込まれている企業を少しずつ買うような形になります。S&P500連動のインデックス・ファンドならアメリカの優良企業500社、全米株式に連動のインデックス・ファンドなら、アメリカ全体の企業、全世界株に連動のインデックス・ファンドなら全世界の企業に分散投資していることになるのです。
先ほどの投資の神様、ウォーレン・バフェット氏も自分の死後は、財産をS&P500のインデックス・ファンドに投資するように家族に伝えているのは、有名な話です。
インデックス・ファンドに投資することで筆者の挙げた投資原則3の「株と債券を幅広く分散する」は実現することができます。それ以外の投資原則1、「将来、いつ何に、どの程度の資金が必要になるか、目標を立てる」、投資原則2、「その目標を達成するために必要な株式と債券の配分比率を決める」、投資原則4、「投資の基本方針を、ブレずに辛抱強く実行する」は、投資に関する計画と、投資に対する姿勢の問題になります。
投資原則1、「将来、いつ何に、どの程度の資金が必要になるか、目標を立てる」は将来に必要なお金をシミュレートし、そのお金を用意することを目的として、投資計画を立てることの重要性を述べています。自分の投資の目的を始めにはっきりさせるのが大切だということですね。
続いて投資原則2、「その目標を達成するために必要な株式と債券の配分比率を決める」は自分のリスク許容度に基づいて資産の配分を決めていく重要性について述べています。一般に債券の方が、株式より低リスクだと言われているので、自分が許容できるリスクに応じて、債券を組み入れていくということですね。しかし、筆者としてはあまり債券を組み入れず、株式を中心にしていく方をお勧めしているようです。
最後に投資原則4、「投資の基本方針を、ブレずに辛抱強く実行する」は、投資原則1,2で決めた自分の投資方針を、市場がどんなに上下しても変えずコツコツと投資していくということです。株価が上がれば、買いたくなり、株価が下がれば売りたくなってしまうものですが、その市場の誘惑に屈せず、淡々と自分で決めた投資方針にしたがって投資を続けていくということですね。筆者は最初から給与から天引きにしてしまうのも良い方法だと述べています。
以上の投資4原則を守り、インデックス・ファンドに長期投資していくことを、本書では敗者のゲームに勝つ唯一の方法として勧めています。取り上げた原則以外にも、投資についてわかりやすく解説している本なので、是非ご一読ください。
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